沖縄本土復帰50周年映画特集「国境の島にいきる」5月公開

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沖縄本土復帰50周年ーー 時代の波に翻弄される文化、言葉、暮らし それでも島に息づくものがある

 かつて「与那国島」はアジアの交易の中継地として栄えてきた。その交流から生まれた文化と、日本や沖縄本島とも異なる独自の言語は島の誇りであった。1972年、沖縄の日本本土復帰とともに、与那国は日本の最西端つまり国境の島になった。ーーその後50年の間、島はどのように移り変わり、⼈々の暮らしはどのように変化したのか。そして、時代を経てもなお変わらないものとはーー

 2021年、世界がコロナ禍に見舞われる中、与那国島は二つの映画を生み出した。島に生まれ育った若き才能が描く望郷の島 『ばちらぬん』、欧州からやって来た気鋭の視点で描かれる⽇常の島『ヨナグニ~旅立ちの島~』。与那国島を新たな角度から描いたこの作品を通して、国境の島そして復帰50周年の意味を問い直す。

 『ばちらぬん』は監督・東盛あいかの故郷である与那国島の日常や祭事を取材したドキュメンタリーと花、果実、骨、儀式などをモチーフに幻想的に描かれる世界が交差しあう実験作。現実とフィクションが溶け合い、ジャンルの枠を超えた映像によって島に紡がれてきた歴史、文化、人々の記憶がスクリーンに映し出される。

 本作で東盛は監督のみならず主演も務め、2021年第43回ぴあフィルムフェスティバルにて見事グランプリを受賞した。その後、東京国際映画祭での上映など各方面から注目を集めている。

 もう一作『ヨナグニ~旅立ちの島~』は高校のない島を舞台に、卒業前の中学生たちを主に取材し、学校生活や豊かな自然で戯れる放課後、思春期の本音が漏れる会話を通して、多感な10代の日々が映し出される。そして、失われつつある島の言葉「どぅなん」や伝統文化がゆっくりと若い世代へと受け継がれる様子が描かれる。

 本作はイタリア出身の映像作家アヌシュ・ハムゼヒアンと写真家ヴィットーリオ・モルタロッティのコンビが監督を務めた。彼らが「スコットランドを思わせるような曇り空の美しい島」と言い表す与那国像は、新しい視点から島の表情を見せてくれる。

 また、二人は映画に留まらず同時に与那国をテーマとした書籍と美術作品も発表した。特に島の写真と言葉のアーカイブで構成される美術作品「L’Isola」(イゾラ、イタリア語で「島」の意味)はイタリア、フランスでの展示を経て、2月より沖縄県内での展示が決定。4月には東京・イタリア文化会館にて展示される。

 なお、公開に際し『ばちらぬん』の東盛監督は「人に島に愛された映画『ばちらぬん』が与那国島から海を渡り全国へ。初監督作がここまでこれた事を感謝致します。本作は沢山の追い風を受けて進み始めます。島の生命力溢れる映画を多くの方に観てもらいたいです」と語る。

 2022年、復帰50周年を迎える沖縄に新しい風が吹く。